Vol.2 2005.7.8 - 2005.7.31
私は作品を通して絵画を日常へと戻し、映像として描き直す事を行なっています。絵画の中で描かれた風景を実際に日常へと、三次元の空間へと引き戻した時、描かれた風景と現実とのずれは明るみになります。「変形」や「整形」された日常は、再び現実へと引き戻されて初めて、日常の姿とはかけ離れた奇妙で滑稽な風景となって現れるのです。
どんなに奇妙で滑稽な姿に成り果てたとしても、映像として一枚の絵画を動かした瞬間、その風景は、そのものの持つ本来の「生のイメージ」を私たちにふいに垣間見せます。時間や動きは、絵画という「変形」され、「整形」された奇妙な風景へと成り果ててしまった日常が、日常へと帰ろうとするきっかけになり得るのです。
『氏の肖像』では14~15世紀の横向きの肖像画と人物を画面上でかけ合わせる事を行なっています。人物の横向きの写真を撮り、それを肖像画の輪郭に合わせて変形させてゆきます。表情豊かなモデルの顔も絵画に合わせ「整形」してゆくと、その顔は次第に無表情で人間味を失ってゆきます。しかし、動き始めると意外にも生々しく、それらが本来の人間性を取り戻そうとしているかの様に私には感じられてならないのです。
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