Vol.3 2005.8.12 - 2005.8.28
この作品/ワークショップは私が90年代に過したスコットランドでの日々の投影であり、私の作品の原点でもあります。ほぼ知識の中になかった異郷の地、そこで過した月日は、今思えば私が“自己認識の危機”に直面した時期でした。それは「健常と障碍」「自己の同一性」「個性」「習慣」「言語」「国・民族・組織など特定の集団への帰属意識」「美的価値観」「身体と精神」など、既知だと思っていた事象の一つ一つを疑い、自分自身の立ち位置を確認してゆく作業でもありました。そういった時に出会ったある少年との交流への想いが、この作品の素材である小枝と輪ゴムには込められているのです。
身近に、何気なくころがっている小枝に輪ゴムを巻き付ける行為は、非常に原始的な手法です。しかしこれが単純な行為故に、私はことばと身体が出会う前のような混沌とした精神状態に自分が投げ出されたかのような気持ちになるのです。
この作品以後、私は人や物の見えない関係について示唆する作品を発表するようになりました。私にとって<もの>=道具であり、<ひと>と<もの>が関わることによって<こと>が生まれます。<こと>が発生する場の総体を作品としてとして考えているのです。
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