Vol.9 2006.4.21 - 2006.5.14
指先に咲く花 澤登恭子
蝋燭に火を灯し、火のまわりにできる蝋だまりへ自分の指を1本1本そっと入れて、指先の蝋燭が固まるのを静かに待つ。熱がじんじんと指先に伝わって痛いようになり、やがて熱がおさまるころには蝋は指の腹の形に固まり、花びらのような形をつくって床に落ちる。
この蝋を指先で固めてできる無数の花びらによる作品『指先に咲く花』は、2003年の作品『散華』のシリーズとして新たに制作したものです。
行為そのものは幼い頃の私の小さな悪戯の記憶から辿ったものですが、そういった他愛もない子供の行為も、シュチュエーションをすこし変える事により、見え方が変わって来ます。私はその危うさと、見る側の視点にとても興味を憶えます。
痛みを伴いながらも花びらを産み出す行為は、女性の性を暗示しておりますが、身体に負荷を加え制約された動きは、私をまるで儀式を執り行っているような厳かな気持ちにもさせます。このように作品中、パフォーマンスをしている時に私自身が持った感覚と、相手が作品から受ける印象とのギャップは私にとっては大切な要素のひとつです。何故ならそれは、私達が日々置かれる状況を改めて再確認させられるきっかけにもなるからです。
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