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終了しました 2022/03/25
はじめまして、東京藝術大学 音楽環境創造科3年生の三枝響子です。大学では地域と芸術家をつなぐ、アートマネジメントを専攻しており、最近東京から取手に移住してきました。
今回は3月15日に初めての試みとして実施された、「ART LIVES TORIDE お散歩ツアー」のレポートをお届けします。
このツアーは、取手で活動するアーティストや活動拠点を取材して紹介してきたプロジェクト 、ART LIVES TORIDEのイベントです。取手市内にアーティストの活動拠点が多くあることを実感できる、歩いて巡るツアーを開催。コロナ禍も相まって、なかなか新しいつながりができにくい状況になっているアーティスト同士の交流の場にもなるよう、アーティストがお互いの拠点を訪ねるように設定されたそうです。
取手には1991年に東京藝大の取手キャンパスが開設、1999年に先端芸術表現科ができたことをきっかけに取手アートプロジェクトが開始され、20年以上の歴史があります。そのあいだに取手のまちでは、アーティストが多く活動の拠点を構えてきたそうです。
今回のツアーでは、ゲストに東京都現代美術館学芸員の藪前知子さん、一般社団法人ノマドプロダクション代表理事/アートプロデューサーの橋本誠さんをお迎えし、アーティストのみなさんに自身の作品や拠点について解説いただきながら各スポットを巡る、とても贅沢な4時間を過ごしました。
「お散歩ツアー」という名前の通り、JR常磐線取手駅から徒歩圏内のアートスポットを回りました。市内にあるアトリエの中ではまだまだ一部ですが、なんと5つも!お天気にも恵まれ、それぞれ個性豊かな空間を「駅近にこんなところが…!!」と驚きながら参加しました。写真とともに1つずつご紹介しますので、取手のお散歩プランにもお役立てください。
「アートのある団地」井野団地。取手駅から徒歩18分、バスだと10分ほどのところにあります。今回の集合場所は、その中にあるコミュニティスペース「いこいーの+Tappino」。ここに参加者全員が集合して、自己紹介とツアーの流れの確認をしました。
フラッグとサコッシュ、ホストをしてくださる拠点のみなさんが作成してくださった街歩きマップは、今回のツアーのためのものです。
この空間がすでに素敵でわくわくしますね!コロナ禍以前はこちらで活発に取手アートプロジェクト関連のイベントが行われており、井野団地にお住まいの方も集う場所だったそうです。今後の状況次第で徐々に再開予定とのことで、またこちらを訪ねる機会が楽しみです。
いよいよツアーが始まり、スタート地点のほど近く、井野団地内の「井野アーティストヴィレッジ(IAV)」に向かいます。こちらは東京藝術大学と取手市が連携し、UR都市機構の協力により、ショッピングセンターであった7棟を改修した、アーティストのシェアアトリエです。スタジオ101から107までの7棟に、公募で集まったアーティストが入れ替わりもありつつ、計25人ほど所属しています。
建物のやわらかい色合いが、ここが日本の団地であることを一瞬忘れさせるようです。今回はこちらで制作をする数名のアーティストがアトリエを案内してくださいました。
「音 動き 触れる」をテーマとした木工の作品を制作しているつちやさん。写真に写っているのは「輪唱の◯」という作品です。
「自分と他者は圧倒的に別物である」という感覚から出発し、制作を行う倉敷さん。こちらの大きな作品は、オフィーリアをモチーフにした、メディウム転写による作品です。
「人間は生まれた時から社会的な存在であるという規定から脱却したい」と話す横川さん。写真は、自分の体を素材として作ったコラージュ。
五感を通して得た情報をさまざまなメディアで作品に起こすJINIさん。こちらは現在ダンサーと共同して制作中のドローイングを見せてくれました。
海外ではオープンアトリエが活発だそうですが、個人的には参加した経験があまりなかったので、アーティストの完成作品だけでなく、制作している環境、まだ制作途中の作品や素材も含めて見ることができる機会が新鮮でした。アーティストが自身の作品について、非常に限られた時間の中で語ることはとても難しいことですが、気になったことをその場で質問でき、鑑賞者としては贅沢でありがたい時間でした。
特に印象に残ったのは、ゲストの藪前知子さんが、アーティストの横川奈月さんの机に置いてあった本について質問して話が広がっていたことです。アーティストが普段どんなものを見て作品を構想しているのかが垣間見えるのも、オープンスタジオの醍醐味だと感じました。
続いて向かったのは、君島英樹さんと諏訪部佐代子さんが運営する「NULL NULL STUDIO」です。制作場所兼展示スペースとして開かれています。
NULL NULLの由来は設立当時、床の塗料が乾かなくてぬるぬるしていたこと、ヌルが数字のゼロを意味すること、そして絵画にとって最も基本の行為である塗ること、という3つの意味合いだそうです。
うなぎを飼っています。
諏訪部さんはオーストラリアからzoom越しにスタジオの説明をしてくださいました。設立当初(2019年ごろ)、留学を考えていたもののコロナ禍で延期になり、取手でスタジオを立ち上げたという経緯に、コロナで自由に活動ができない中でも、取手でさまざまな活動の芽生えがあったのだなあと想像を巡らせました。
道中、自然が美しい取手。春の訪れを感じるお天気でした!駅の方に戻りつつ次の場所へ向かいます。
これまでの場所とはうってかわって、「コンフリ art space /bar conflictable cube」はバー兼アートスペースです。さまざまな種類のクラフトビールを取り揃えており、柏の卸市場から仕入れてくる海鮮メニューが美味しいと評判です。アーティストの葛谷允宏さんが運営しており、コンフリは「表現活動としての飲み屋」であるという話をもっと深掘りしたくなりました。取手駅のすぐそば、アクセスしやすい場所にあるので、お酒を飲みに行って葛谷さんにお話を伺うことができるかもしれません。
いよいよツアーも終盤、住宅街を抜け、彫刻家 島田忠幸さんの作業場「スタジオ忠」へ。
高い天井、作品の数々、それらを生み出す道具や機材に圧倒されます。
さまざまな場所で作品を目にする機会の多い島田さんですが、長い間取手に拠点を置いて活動しており、取手アートプロジェクトにも立ち上げ当初から関わってきたそうです。最近では、藝大生に住居と制作場所を提供する「取手バウハウス」を主宰し、若手アーティストのことも温かく見守っていらっしゃいます。
じっと見ていると愛着が沸く、こうもりの彫刻。
5ヶ所を巡った充実のツアーが終了し、最後は取手の広大な河川敷で集合写真を撮りました。
アートイベントが活発に行われ、すでに「アートのまち」のイメージの強い取手。今回は、実際に取手を拠点として制作を行うアーティストたちに実際に会うことで、その存在を強く感じることができました。取手で日本全国、海外でも活躍するアーティストの作品が生み出されており、取手で若手とベテランのアーティストの交流も生まれていることが分かりました。取手から今この瞬間もアートが生み出されていることを知り、魅力的な取手アートシーンの存在を感じました。
今回ご紹介した拠点、アーティストのみなさんについては、ART LIVES TORIDEのサイトおよび、それぞれの公式サイトからご覧いただけます。取手を訪れた際には、ぜひ公開情報をお確かめのうえ、アートの拠点を巡ってみてください!
ART LIVES TORIDE
井野アーティストヴィレッジ|ART LIVES TORIDE
横川奈月|ART LIVES TORIDE
JINI(真熙)|ART LIVES TORIDE
NULLNULL STUDIO|ART LIVES TORIDE
コンフリart space / bar conflictable cube|ART LIVES TORIDE
島田忠幸|ART LIVES TORIDE