アートのある団地 - そうぞうする団地

そうぞうする団地 活動パートナー #000 (Pre):平井亨季 HIRAI Koki

開催中 2024/11/28


暮らしながら、それぞれが”そうぞう”することを通じて、 少し先のまちを手づくりする。
取手井野団地ではじまっています。

今回は、井野団地や取手のまちで生活している方とともに、少し先のこの地域・この社会に必要な「仕組み」を団地を起点に実験し、将来の設計をつくっていくことを目指して活動してくれているパートナーとその取り組みをご紹介いたします。

 

そうぞうする団地についてはこちらから

 

活動パートナーとして最初にご紹介するのは、平井亨季さん。
平井さんはそうぞうする団地が走り出す前、取手井野団地での新しい住戸の実験から参加してくれたアーティストです。
東京藝術大学取手校地で学んでのち井野アーティストヴィレッジに所属していた平井さん。2023年の秋、そうぞうする団地のいわば前奏期に、驚くほどのジャストタイミングでモニターとして新しい部屋での暮らしをはじめることになりました。
居住から1年が経った2024年秋現在も、取手井野団地の普段は見えない上階で何かおもしろいことが起こっていて、それが時々ひらかれる、という試みを継続しています。

パートナーアーティスト

 

平井亨季 Hirai Koki

1996年広島県呉市生。具体的な土地へのリサーチを基にしたロトスコープによるアニメーションと地図を用いたドローイング/ジオラマを組み合わせたインスタレーションを主な表現方法としている。
​​現在は主に軍港都市・震洋基地跡を巡ってフィールドワークを重ねており、文化地理学的な視点からそれぞれの場所の地誌を読み解き、再配置あるいはフィクショナルに変奏することで、リニアな歴史観や近代的な区分を読み替えることを試みている。 Webサイト

 

 

略歴
1996  広島県生まれ
2015  東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 入学
2019  東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現科 卒業
2019  東京藝術大学大学院 映像研究科 メディア映像専攻 入学
2021  東京藝術大学大学院 映像研究科 メディア映像専攻 修了
2023〜 茨城県取手市在住

展示歴
2024 「Hiroshima MoCA FIVE 23/24」公募展 / 広島市現代美術館(広島)
2023 「Artists in FAS 2022」入選アーティストによる成果発表展 / 藤沢市アートスペース(神奈川)
2022 「歩行の筆跡(ディスクール)」吉田真也との2人展 / タメンタイギャラリー鶴見町ラボ(広島)

受賞歴
2024 「Hiroshima MoCA FIVE 23/24」入選 特別審査員賞 広島市現代美術館賞
2022 Artists in FAS 2022 入選
2017 平山郁夫奨学金賞

 

団地での活動について

「スタジオ502(仮)」

場所:井野団地2街区2号棟502号室

2024年度から募集の始まったUR都市機構企画のSF付き住居(4階5階のセット物件)に、取手アートプロジェクト(TAP) の紹介で、2023年の9月末から2024年の3月末までモニターとして居住を始める。その後、2024年4月からも継続して居住。
普段は402号室に居住し、502号室は制作スタジオとして利用しているが、時折友人や取手市に住む人の交流と発表の場として活用している。

「スタジオ502(仮)」展示歴 2023.12~2024.6

福原翼 「2DAYS」2023.12.17(金) 18(土)
杉山迦南 「沈黙のはかり方」 2024.1.13(土)-15(月) 吉田真也 「マツロワヌ・タミ」 2024.5.31(土)-6.2(日)

活動への想い

大学を出て、同級生たちがどんどんと疎遠になっていくのを感じていました。よくある話とはいえ寂しさ半分、勿体無さ半分で何かできないかと考えていながら何もできずに2年強過ごしていました。
それは決して志を同じくした組織を作りたいという種類のものではなく、ただ知り合い同士が生存確認の延長線上で集まって話のできる場所があったら、作家として作品を作り続けていこうとしているに私にとってどれだけ心強いかと思っていたからでした。
今まであった関係性を、土に空気を入れるように掘り起こしてまた新たな作物が実る土壌にすることができれば、そんなにおトクなこともないとも思っています。
そのような思いから、この物件の居住と活用の方向性を考えていきました。
特に連絡するほどではないけど会ったら喋る、というような類の話というのが案外社会生活にとって心に余裕や充実感を与えてくれるいいものだなというのは、実際にこの場所を動かしていて感じたことでした。

また、遠いところで活動している人や、家でコツコツ作っている人の制作物や活動をまとめて見てみたいと思っていて(できればそれを他の友達にも見せたいとも)、このスペースがあればそれが出来るんじゃないかというのも、まず思い浮かんだことでした。
居住空間が真下にあるので遠方の友人の宿泊場所にもなりますし、ちょっとした休憩や食事なんかも一緒に企画することができますので、ただ作品を持ち込んで見せるといった典型的なパターンから外れた試みへの敷居も低くなります。
展示空間は展示空間で普段は作業場所として使っている場所で、生活感も少なくニュートラルな雰囲気を保てるので、それなりの緊張感と公共性も作ることができます。
そうした場所の性格から、そのどちらも活かした、イベントや展示を半クローズドにして行うという運用を現在は選んでいます。

作品を見せる機会をどのように作っていくかということは制作の継続の上で必要なことで、作品に対して、あるいは作家に対して継続的に観測してくれる人を作ることもとても重要なことなのだと思っています。
ただそれは社会に出ると手に入れるのがとても難しいものだということをこの数年で実感しました。
ここではそうしたなかなか持ちづらい接点を、作品を見に行くというのを口実に作ることができるのではないかと考えています。
また、仕事によって制作の時間が制限されている人やそもそも展示に不慣れな人、そもそも別に美術をやっているつもりもないけど場所が必要な人にとって、気負わずに今できることを実践する場所として機能させることができれば、こういう場所があるということで新たな作品や活動も生まれるかもしれません。

美術館やギャラリー以外の場所で展示する機会も当たり前になってきていますが、作品を見せる/見るという行為自体の堅さはあまり変わっていないように思います。
この場所では、生活者の視点から作品を作る、見るという流れを自然なものにしていき、制作の過程や鑑賞体験をほぐすことを試みています。
そして、ここに出入りする人にとって、自分のペースを掴み直す場所になっていけば嬉しいなと思っています。

取手との関わり

私(平井)は2015〜2019年の間東京藝術大学美術学部先端芸術表現科に在籍しており、キャンパスのある取手にはこの4年間通っていました。(最初の一年は台宿に住んでいました)

2019年からは井野団地内にある集合アトリエである井野アーティストヴィレッジ(IAV)に所属しており、今回のSF付き住居(4階5階のセット物件)に住むことになったのも、このアトリエにモニター募集のメールが届いたことがきっかけでした。

大学院を修了してからは都内のワンルームに住み、地元の広島とを行き来しながら作家活動をしていたのですが、倉庫のようになっていたこのアトリエをどうにかしたい、いっそ取手に住もうかなどと考えていた私にとってはまさに渡りに船といった形で舞い込んだ居住モニター募集のメールでした。メールが来たのは2023年の8月末なので、お話が来てから約1ヶ月での居住となりました。

また私は、井野団地のお休み処いこいーので取手市の高齢福祉課臨時職員として2023年12月から週一ほどのペースではありますが働いています。こちらも取手アートプロジェクトの紹介です。

地元から出て初めて住んだ土地であり、10年近く経ってまた戻ってきた取手には不思議な縁を感じています。

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