半農半芸 - TAKASU HOUSE
終了しました 2012/07/14
先日、シノドスが開く環境エネルギーに関する勉強会と3331で開かれているアートプロジェクト研究会の講座の2つの勉強会に参加してきました。
※シノドス http://synodos.jp/
※「日本型アートプロジェクトの歴史と現在Ⅱ」 http://www.tarl.jp/cat_lesson/2066.html
文責:風間 勇助
まずはシノドスでの勉強会でのことなんですが、ゲストは環境エネルギー政策研究所の古屋将太さん。デンマークのサムソ島で100%自然エネルギーを実現したプロジェクトの事例が紹介されました。
サムソ環境エネルギー事務所が旗ふり役となり、その島の人たちや行政との小さな小さなコミュニケーションの積み重ねで、実現したプロジェクトだそうです。
デザイナーがまず、風力発電の風車を島にこんなふうに並べてみてはどうかと、市民たちにイメージ図を見せれば、「そんなんじゃダサい」とか「数が多すぎないか」などの声があがり、修正を繰り返し、市民の納得の行く風景が頭の中で描けたかと思えば、行政の立場からのコストについてやリスクについての議論、そういういろんな立場の人とのコミュニケーションの積み重ねの結果、実現されたそうです。これってなんだかアートプロジェクトっぽい現場だなぁと感じました。
地域主体でプロジェクトを行なっていく上でのガバナンスの問題と、旗をあげる人が媒介者となってネットワークを築いていくことの重要性を感じました。
本当はもう少し政策論的で固定価格買取制やら、海外の進んだ事例から、日本の現状についてまで僕にはついていけない難しい内容もあり、他にもさまざまな事例が紹介される中でのごく一部を拾った感想ですが……。
エネルギーシフトは技術選択ではなく、パラダイムシフトであること、地域によって条件がそれぞれ違う中で、いかにして適切なプロセスと体制をつくるか課題であるというお話でした。
そして、アートプロジェクト研究会での話に移りますが、全3回ある中でのまず第1回に参加してきました。
昨年から開いてきた研究会をもとにアートプロジェクトの定義に挑んでいます。
コーディネーターは熊倉純子先生です。
アートが美術館の外に出て以後(作品発表の場を求め)、野外美術展という形式には必然的に行政や(企業や)市民の協力なくして実現され得ず、ボランティアを含む多様な関わりが生まれ、その流れが最近では地域コミュニティの活性やいわゆる“まちおこし”に結びつき、アートはアート以外の社会分野・社会的事象と関わっていくようになっている今日です。
(かなりざっくりですが……)社会システムとしてのアートプロジェクトと呼んでいました。
そんな略史から導かれたアートプロジェクトの定義案は「1990年代以降日本各地で展開されている、同時代の社会の中に入り、個別の社会的事象と関わりながら展開される共創的芸術活動。新たな芸術的/社会的文脈を創出し、既存の回路とは異なる接続/接触の契機を提示する。」です。
そうしたアートプロジェクトの特徴として、作品制作のプロセスを重視することやプロジェクトの継続性、芸術分野以外の社会分野に働きかけていくなどがあげられました。
半農半芸でいえば、アートと環境・農業というように。
そこで僕が感じたのは、主にまちおこしと密接に結びついたことが大きな理由ですが、アートプロジェクトはものすごく政策論的に語られる概念のようだなぁと。
まさしく“プロジェクト”で、芸術祭や野外美術展のようなイベント性が薄れていっている?
先ほど自然エネルギー政策を進める上では技術選択ではなく、パラダイムシフトなんだというお話がありましたが、今政策を立てる上で必要になってきている価値観の転換というのが、アートプロジェクト(を進めるプロセス)に求められてきてしまっているのではないかと。
結果、自然エネルギー100%を実現したあのプロジェクトも充分にアートプロジェクトっぽいし……。
政策論的でプロセスを重視した結果、質の高い作品はどこに?
社会に働きかけなきゃという思いから表現の自由が制限されてない?
という批判もあります。
そうした疑問をぶつけたところ
「アートプロジェクトというのは過渡期の概念なのかもしれない。アートプロジェクトと称していないけれどアートプロジェクトっぽいものがある、というのはこの先プロジェクトを進めていく上でアートは欠かせない、アート・イン・プロジェクトというのもこの先のひとつの予想図かもしれない。」
と熊倉先生から返答いただきました。
この研究会はまだあと2回を残しており、上記に記した定義案もまた変わっていくかもしれません。
イベント型ではなくプロジェクト型をと訴えた半農半芸プロジェクトも実はアート・イン・プロジェクトかもしれませんね。