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終了しました 2019/07/28
7月27日土曜日。いこいーの+TAPPINOで、「とりでアートの日。 ワークショップ『親子で美術館に行きたくなる「鑑賞ゲーム」のつくりかた』」 を開催しました。 雨空が続いた、7月。当日は台風の影響も心配されましたが、気持ちよい青空も見え、夏らしい日差しが降り注ぎました。
今回のワークショップは、作品の鑑賞を親子でもっと楽しむことが目的。 鑑賞は、美術館で静かにおこなうもの、 解説などを読んで理解しないといけないものというイメージがあるかもしれません。 でも、今日は親子でおしゃべりしながら、体を動かしながら、 にぎやかに、自由に、鑑賞をしていきます。講師の佐藤悠さんは、一見何もないところから、 誰かが関わり合うことで表現を紡ぎだすアーティスト。 鑑賞プログラマーとして、言葉のみならず、体での表現なども使って、楽しい視点を生み出す鑑賞方法の開発・実践もおこなっています。
まずは、佐藤さんの活動のひとつである、「いちまいばなし」からスタート。 1枚の紙に絵を書きながら、その場にいる全員で即興の物語を作るパフォーマンスです。大人と子どもが交互に物語をつなぎ、宇宙を舞台にした壮大なストーリー「パンツの給食」が生まれました。パンツの給食のおかげで、参加者のみなさんの心も頭も、ほどよく柔らかくなったところで、鑑賞のはじまりです。
まず、「美術館を楽しくするための3か条」が示されました。それは、
・作品よりも子どもをよく鑑賞すること
・他の子どもと比べないこと
・子供の想像や行動を止めないこと
そう、これは大人に対する決まり事。佐藤さん曰く、子どもは、実はちゃんと楽しむコツを分かっているので、子どもへの決まり事はありません。
最初の鑑賞ゲームは、「鑑賞ホン」という糸電話を使って鑑賞する、「糸電話鑑賞」です。 子どもが絵を見て気づいたこと、分かったことを「鑑賞ホン」を使って親に伝えます。親は自分の意見は言えません。自分の意見は言えませんが、 「何が描いてあるか教えて?」 「どうしてそう思うの?(理由を聞く)」 「それってどういうこと?(詳しく聞く)」など、 質問ができます。お互いのやり取りは、「鑑賞ホン」を通じてのみ行えます。親は、後で子どもが何を話したのかあとで発表するので、話をよく聞いて覚えておくこと。 うまくお話できない時もあると思うので、その時はのんびり絵をながめたり、親は子どもがどんな様子なのかを見守ったりしてみましょうというお話がありました。今回は2つの作品を観ました。ゴーギャンとカンディンスキーです。
絵本のような世界観のあるゴーギャンの絵は5分間、抽象的で少しとっつきにくそうなカンディンスキーの絵は10分間鑑賞しました。 通常、美術館で1枚の絵を鑑賞する時間は、平均で30秒〜1分未満ほどだというデータがあるそうです。それに比べると今回は、1枚の絵をじっくりじっくり時間をかけて観ることになります。それも新しい体験です。
子どもたちは、まず鑑賞ホンが面白く、「わーわー」と声を出して、楽しそう。でも、絵が提示されると、近づいてみたり、離れてみたり、 鑑賞ホンでお話しながら、「ここの部分がこうでね」と親に伝えるように、絵を指さしにいったり、見つけたこと、感じたことを伝えていました。
親による発表タイム。
ゴーギャンの絵では、 「真ん中のお地蔵さんみたいなのが怖い」 「魚つりをしている」 「水面にお花が浮いていてきれい」 「この人たち、裸で恥ずかしくないのかな」 「おばけがいる」 「遠くに馬に乗った人がいるよ」などの意見がでました。 大人が発想もしなかった意見が出て、 子どもたちが絵の細かいところまでよく見ている様子が分かりました。
カンディンスキーの絵では、 「ドレスを着たお姫様がいる」 「太陽が昇っている」 「戦闘機がいる」 「ウルトラマンがいる」と 子どもたちによって見方が様々でした。
親からの発表だけでは物足りず、 自分の言葉で発表の補足をしてくれた子どもたちもいました。 絵から感じたことがたくさんあって、伝えたいことが溢れる様子から、 鑑賞を楽しんでいることが伝わってきました。 じっくり鑑賞し、たくさんお話した後は、体を使った鑑賞です。 「鑑賞体操あそび」をしました。
まずは、準備体操。 うさぎやゴリラ、動物の真似をして飛び回ります。 次は2つのチームに分かれて、炎と雨になります。 燃え盛る火、今にも消えそうな火。しとしと雨、嵐。 強弱を変えながら、体全体で炎と雨を表現します。 そして、炎と雨が互いにぶつかり合い、最後は一つの水の流れになって、 川になり、海になります。 各自それぞれ海の様子を表現。 海で泳ぐ人、かわいい魚、大きな人食い鮫、ゆらゆら揺れる海藻。 最後は、大人たちの海藻があふれました。
そして、次はまた違う海をみんなで表現します。 葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」です。 海、波、山、船、人…それぞれどの役回りをするか、相談しながら、 実際に演じてみながら、表現していきます。 出来上がった絵は、なんと3Dに! 浮世絵が飛び出し、360度どこからも楽しめるダイナミックな作品が出来上がりました。
体を動かしたら、しばし休憩。 子どもたちは久しぶりの晴れた外の公園で、元気に遊びまわる中、 大人たちは会場に残り、今日の鑑賞ゲームの感想をお話しました。 「せっかく美術館まで出かけてきたのだから、子どもにもちゃんと見せなくてはと思い、 静かに見てくれないといらいらしてしまっていたけれど、そんなに肩ひじ張らず、 自由に楽しんで良いのだと思った」という意見がありました。 ワークショップを通じて、子どもたちは、自分なりによく絵を観て、 感じているということを痛感しました。 それならば、大人も「こうしなければいけない」という思い込みから離れて、 どう感じたかを大切にしてみると、きっと鑑賞がもっと楽しくなります。
また、子どもには刺激が強すぎると思われる作品との関わり方についての お悩み相談もありました。 子どもに触れさせる作品を親が線引きして良いのか、それは、明確なボーダーラインも設けてしまうのではなく、 都度「どうしたらよいか」を考え続けることが大切なのではないかという意見が出されました。ルールをはじめから決めてしまうのではなく、 一緒に考え、話し合うこと自体がいいことなのでしょうね。
親子で美術館に行くこと。 それは、大人だけでは気づかなかった子どもの視点があることで、 新たな発見が生まれたり、考えるきっかけをもらったりする。もしかしたら、それは子どもという存在がいるからこそできる、 親子ならではの鑑賞の楽しみ方なのかもしれません。
公園から帰ってきた子どもたちと、最後にもう一度、「鑑賞体操あそび」をしました。
今度は、「糸電話鑑賞」で観たゴーギャンやカンディンスキーの絵も体で表現しました。 どんどん完成度が上がる表現に笑いが絶えない楽しい時間になりました。まだまだ楽しい夏は続きます。 そして夏の次には芸術の秋もやってきます。これからも親子で美術鑑賞、是非楽しんでくださいね。
2019年度 取手の芸術活動連携サポート事業(取手市文化芸術課)
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