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レポート:アーティストと取手のものづくりを訪ねる「アーティストのための社会科見学ツアー」

終了しました 2023/04/22


みなさんこんにちは、取手アートプロジェクトインターンの岡﨑未樹です。
今回は3月22日(水)に行われた「アーティストのための社会科見学ツアー」のレポートをお届けします。
今回わたしはツアーの企画から携わり、当日はアテンドを行いました。

「アーティストのための社会科見学ツアー」は、ART LIVES TORIDEの一環で、取手にくらすアーティスト向けの企画をと考えていたときに生まれたアイディアです。取手市には多くのアーティストが生活し、制作活動をしていますが、特に日が浅いアーティストたちにとっては、取手がどういった場所で、何があるのかを知らずにいる方がほとんどだと感じていました。

取手という土地で、作品制作とは少し違うものづくりをする方々と出会うことで、新しい知識や、インスピレーションのきっかけにになれば。そして取手に関わりを持ち始めた芸術家たちに、土地のことを少しでも知ってもらうことを目的として、このツアーを企画しました。

今回は、歌舞伎あられ池田屋さんと矢羽根本家さんにお伺いしました。

歌舞伎あられの池田屋さん
昭和8年(90年前)創業。あられ・おかきの製造販売を手がける。創業以来変わらず伝統製法の「杵つき」や「天日干し」での工程などにより、なめらかでコシのある香りが良い本格的なおかき・あられを製造販売するお店です。(池田屋さんHPから引用)
矢羽根本家さん
江戸時代(160年前)創業、昭和28年(1953年)矢羽根本家株式会社設立“手造り”にこだわり打刀物の製造販売を手がける。現在は、円匙の製造販売を中心に各種農機具、包丁等の販売。軽くて、土切れ、土離れが良く使いやすく、主に造園、土木、農業といった方々に愛用されています。(矢羽根本家さんHPから引用)

どちらも取手で90年以上の歴史のあるお店です。早速スタートしていきましょう!

出発前の記念撮影。写真作家やパフォーマーが参加しました。

ツアースタート

取手ウェルネスプラザの芝生集合から始まりました。前日まで雨予報でしたがなんと当日快晴に!むしろ上着がいらないくらいに暑い!
太陽を味方につけ、まず参加者と歌舞伎あられ池田屋さんに向かうべく、取手駅西口から山王局前までバスに乗ります。今回のツアーは取手に来て日が浅いアーティスト向けだったので、参加者がプライベートでも行きやすく、かつ「こんなところも取手!」と思ってもらえるように、行きは公共交通機関のバスで向かいました。

歌舞伎あられ池田屋

山王局前バス停から歩いて3分ほどで、歌舞伎あられ池田屋さんの工場に到着。外ではたくさんのおかきが天日干しされており、工場からはお米のいい匂いが漂っていました。
歌舞伎あられ池田屋さんの案内をしてくださったのは、社長の池田裕児さん。入ってすぐ目に入る天日干しは、茨城県だと2軒ほどしか行われていない方法だそうです。こうして干すことで外はカリッ、中はふんわりとした食感が出せます。
今日、天日干しを見ることができたのは晴れの天気だったから。本当に運がよかったなと思います。

いよいよ工場の中へ!
工場の工程は曜日によって違うらしく、今日は細長くした生のおもちをカットされていく様子を見学しました。おかきのおもちをカットするのも、冷凍してから切る方が早いそうなのですが、池田屋ではつきたてのおもちを使って柔らかいまま切ることで食感をよくしています。しかし、おもちを生のままカットするのはとても難しい工程のようです。

次は直売所へ。

直売所では池田屋さんが製造しているおかきはもちろんのこと、コーヒーや和ジェラートも食べることができます。早速おかきを購入する参加者も。
先程の天日干ししたおかきの食感を楽しんだり、味比べをさせていただき、期せずしてゆったりおやつタイム。

社長の池田裕児さんは「作業が楽な方や、効率のいいやり方を無意識に選びがちですが、それで味が変わってしまったりして、お客様に味のご指摘をいただくことがありました。私たちのおかきを楽しみにしているお客様のために、手間をかけておいしいおかきが作れたらいいと思っています。」
伝統的な手法を用いて手間ひまを惜しまずにおかきやあられを作る一方で、新しい味、新しい商品作りに挑戦されている様子に、とても印象深く感じました。

矢羽根本家

名残惜しいですが、次の見学先へ。
車で取手駅東口へ向かい、徒歩1分ほどのところにある矢羽根本家さんに到着。ここは「通学中に見たことがある!」という人もいたくらい、馴染みのある通り道沿いにあります。

矢羽根さんで製造している円匙

矢羽根さんの円匙は、先の方が刃になっており簡単に木の根を切り落とすことができる製品です。そのため長く造園、土木、農業の方々に愛用されて「円匙といえば矢羽根」と言われているほどです。
鋼の切断や、重油炉を使用した材料の熱処理、刃先のみがき、手作業での組立てなどなど多くの工程が存在しています。

案内をしてくださるのは社長の根本昌卓さん。
今回はなんと「焼き入れ」と「焼き戻し」を体験させていただきました!窯を朝から温めてくださり工場内はとても暑くなっています。

まず、「焼き入れ」「焼き戻し」とは何かの説明を受けます。
「焼き入れ」は窯に鋼の先を入れ熱し、色が変わったら油につけて冷まし硬度を上げます。オレンジ色になるまで熱した鋼を油につける際は、煙とじゅわっという音がして体験者も見ている人たちもドキドキしました。

「焼き入れ」したままでは硬度は上がっても石や木の根に当たった衝撃に弱く、簡単に割れてしまいます。
「焼き戻し」はさらに火に通すことで、硬いものが当たっても割れない鋼を作ります。焼き戻し体験は熱伝導によってどんどん色が変わる鋼を見ながら「ここだ!」という瞬間に水に入れて冷却しますがその瞬間がとても難しく、熱が入りすぎていたり1箇所だけ熱伝導が甘かったりと全体に熱を加えたりするのはなかなか難しい。

根本さんは「(自分には)今は難しくはないのだけど、昔先代に教わりながらできるようになったんだ」と教えてくださり、長い間素材と向き合ってきたことだから出来ることなのだと思いました。
その後はグラインダーで刃をつけて、これで根っこもスパッと切れる鋭い円匙の鋼部分ができます。

約200過程の中のほんの一部の見学でしたが、とてもいい体験をさせていただきました。
参加者はお土産に自分たちで体験して作った鋼をいただいて持ち帰りました。
「根菜類は切れるかも?」とのこと。

ツアー終了!

あっという間にツアー終了!
最後に参加者とコンパクトに感想を伝え合いました。
「住んでいる取手の知らない場所を知れて面白かった」
「どちらも、作っている工程を人に例えたり、ものに例えたりしているシーンが印象的でした」
などの声が上がりました。

今回ツアーをして印象深かったのは、見学に来た私たちはもちろんながら、作り手の方々も楽しそうに、ご自身たちで作られた製品について話してくださったところです。こだわるポイントも苦労話も楽しそうに話す様子に、取手で誇りをもってものづくりをしている方々がいることを知れたことそのものが、今回のツアーで大きな収穫だったのではないかなと思います。

今回のツアーの様子をART LIVES TORIDEのインスタグラムにて見ることができます。
ぜひそちらもご覧ください。
アーティストのための社会科見学ツアーその1 Liveアーカイブ 歌舞伎あられ池田屋
アーティストのための社会科見学ツアーその2 Liveアーカイブ 矢羽根本家株式会社

レポート:岡﨑未樹(TAPインターン)
写真:古田七海
ストーリー撮影:工藤結依

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