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レポート:令和5年度 芸術家パートナーシップ事業 放課後アートの時間@子ども教室

終了しました 2023/09/20


 取手アートプロジェクトは取手市と連携し、放課後子どもクラブ(学童クラブ)への芸術家派遣を行っています。
 起点となったのは、2020(令和2)年より3年間実施した『芸術家パートナーシップ事業「放課後アートの時間」』。コロナ禍における芸術家、および子どもたちの活動支援を目的に、芸術家と子どもたち、クラブの運営を支える人々が関係を築きながら、個々の視点や専門性を活かしたプログラムを展開しました。これまでの活動では、芸術家が放課後子どもクラブに居合わせ、放課後の時間にアートが介在することで普段の規則やルーティンからちょっと外れ、互いの価値観に気づき共に学び合う場が生まれました。

 事業を終えた後も「ぜひ続けて欲しい」との声をクラブの支援員さんからいただき、これが取手市子ども青少年課に届いたことで、活動を継続できる運びとなりました。同課が日ごろ放課後子どもクラブで行っている「子ども教室」に参画し、芸術家1組が市内のクラブ11箇所で1回ずつ活動中。予定のおよそ半分を終えたところで、現場の様子を一部ご紹介します。

永山小学校ひよどりクラブでの活動(2023/08/30)

 クラブにやってきたのは芸術家の名取愛梨さん(令和4年度「放課後アートの時間」参加芸術家)と、サポートのコウ・ハンさん。机に山盛りのカラフルな材料を使って、世界に一つだけの仮面を作ります。

どんな仮面にしようかな。見本を参考に思いを巡らせ、まずはベースの形を選びます。
補強のため色画用紙2枚を重ねて貼り合わせ、目の位置に穴を空けたら…

なんてユーモラス!
自分ならではの仮面になるよう、ここから更に装飾を施していきます。

顔に装着するため、耳にかけるゴム紐も取りつけました。パンチで空けてもらった穴に通して両端をひとつ結びに。苦戦する様子も見られましたが根気よく、自分でできた時には達成感!

そしていよいよ飾りつけです。
材料選びは列に並んで順番に、色とりどりのフェルトやリボン、造花やスパンコールの中からお気に入りを探していきました。大きな花に人気が集中しましたが、名取さんが間に立って、欲しい人みんなで花びらを上手に分け合えたようです。

彩りとバランスを考えながら材料を配置していきました。形も材質も色々なので貼り付け方も試行錯誤。ボンドやセロハンテープで解決しない場合は、ハンさんの手を借りグルーガンで接着します。

「まだ何か足りない気がするけどどうしよう?」「見て!これどう思う?」
名取さんや友達に相談し、互いの頑張りを褒め合う子どもたち。和気あいあいとしながらも真剣に、それぞれのイメージを形にします。
スパンコールで輪郭や目の周りを縁取る、緑色にこだわって同系色のフェルトをモザイク状に貼り合わせる、片方の目に扉をつけて開閉式にするなど、独自のアイディアと工夫が作品に込められていきました。

そうして、十人十色の素敵な仮面が完成しました!
得意満面で装着し、顔が隠れるはずが、却って一人一人の個性が際立つようです。友達と見せ合って完成を喜び、家族を驚かそうと、仮面姿のままお迎えを待ち構える子も。

最後にみんなで集合写真を撮りました。
夏休みの終わりに色鮮やかな思い出を残せたのではないでしょうか。

活動の効果とこれから

 誰もが身に着けて楽しみ、パフォーマンス的な展開も期待できる仮面づくり。普段はあまり馴染みのないアイテムを喜んでもらえるかどうか、芸術家の名取さんはドキドキしていたそうですが、子どもたちは熱中して取り組んでいました。

 「私たちが何も言わなくても、子どもたちは仮面を一つの世界観を描くキャンバスのように捉えていたようで、自分の考えるテーマに沿って迷いなく、黙々とデザイン構成していたのが印象的でした。それぞれの個性溢れる仮面を短時間で完成させたことに驚くと同時に、誇らしげに着けて教室を歩きまわる姿に、私たちも幸せな気持ちになりました。オリジナルの仮面を通じて、いつも一緒に過ごす友達の新たな一面を発見し、子ども同士の会話にも繋がったことを嬉しく思います。」

そのように名取さんは話しています。
 また、各クラブで活動を支えてくださった支援員さんからは、次のような感想をいただきました。
「仮面の形や貼りつける材料等、全て自由にできたのが良かったです。」
「上級生も喜んで作っていました。」
「作品完成できるかどうか心配していた子も、熱心に楽しく制作していました。各々大事に大事に持ち帰って行きました。」

 更に子ども青少年課のコーディネーターも、
「低学年も集中して制作していたのがとても印象的だった」
とのこと。実施前後に芸術家と打ち合わせを重ね、クラブとの連絡調整や材料調達など、縁の下を支えてくださっています。

 子どもたちと芸術家の出会いを通じて、今回も多くの人が手を携え、新たな体験を共有しています。秋からは活動の折り返し。子どもたちがますます楽しく、一人一人の個性を発揮でき、多様なコミュニケーションが生まれるよう、これからも地域のアートと子どもの居場所を繋いでいきたいと思います。

主催・協力等
主催:取手市教育委員会子ども青少年課
運営協力:あーと屋図工室(浅野純人)、NPO法人取手アートプロジェクトオフィス(小野寺茜、倉持美冴)

芸術家プロフィール
名取 愛梨(なとり あいり/美術家)

2000年生まれ、東京藝術大学大学院 グローバルアートプラクティス専攻所属。
絵画・ドローイング・彫刻など多岐にわたる表現方法で、作品制作を行っている。作品の主なテーマは 「生命と自然、そして想像世界の融合」。美術でしか表現できないものを模索し、日々探究している。
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令和4年度 取手市 芸術家パートナーシップ事業「放課後アートの時間」レポート
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