TAPの現在地 - ウィークエンド藝大食堂, 半農半芸 - 藝大食堂
終了しました 2021/07/15
藝大食堂に関わる人、活動を広げていくため、拠点と活動をひらいていくプロジェクト「ウィークエンド藝大食堂」。2020年度の活動のひとつの軸として、藝大で学ぶ学生から作品を公募、その制作過程を月に一度、審査員、取手アートプロジェクトの事務局とともに、画面越しに共有しています。
公募をした際、アイデアを考えていた時期から約半年。世の中の状況が変わり、さまざまな人と出会い、各々の時間を過ごすなかで、作品の考え方やアウトプットの方法なども当初考えていたものから変化が生まれているようです。
(これまでの様子)
2020/6/22 はじまりの打ち合わせ
2020/7/27 居場所をつくるメディア
2020/8/24 誤解が生じる豊かさ
羽原
今日は毛利さんもジョンさんも取手で、藝大食堂にいます。今日も進捗のご報告、お願いします。
田中
よろしくお願いします。いつも同じ報告にはなるんですけど、またいろいろな人と出会いましたという感じで。前回話した、雨獅子のパフォーマンスをやっていた卒業生のユニットと話すことができました。その頃から取手のリサーチをやっていた藝大生がけっこういたことに気づけたのが、一番の収穫かもしれません。あとは取手駅のVIVAで活動しているアートコミュニケーターで、取手市民の方々ともお話させていただきました。
田中
だんだんと外出制限もゆるやかになってきている感じがあって、人に会える機会も増えてきたかなという気がします。
毛利
リサーチが進んで、それがどう形になっていくのかアイデアはあるのかな。
田中
取手にいろんなことをやっている方がいらっしゃるんですけど、みなさん、なかなか繋がらないとおっしゃっていて。コロナ禍だからこそオンラインで気軽にできることもあるし、そこを繋げてみたいなと思っています。
毛利
やっぱりキュレーションか。
田中
そうですね。一番わかりやすいのは、地図で示せるとおもしろいのかなって。ぽつぽつといろいろなところに点があって、そこから星座みたいなものが生まれてくる地図のようなものとか。
毛利
10月から藝大食堂も開いていたり、このミーティングを始めた頃よりも状況が変わってきてるわけじゃないですか。展覧会ももしかしたら、フィジカルなものができるかもしれない状況になってきていて。
田中
はい。
毛利
そろそろアウトプットのイメージみたいなものがあってもいいのかなって。このプロジェクトに関わらず、これからもいろんな人と出会っていくだろうし。
田中
藝大食堂にお連れしたい人もいっぱいいるので、状況を見ながらご一緒したいです。
毛利
頭の中には何人くらい浮かんでいるの?
田中
20人くらい、もちろん全員が来れるかわからないですけど。
小沢
面積あたり何人入場可能なのか科学的な根拠で人数が割り出せるらしいね。
田中
はい。今まではどうしてもできなかったことが、少しずつできるようになってきた感じはあります。
毛利
荒川さんと2人で展示する可能性もあるだろうし。
荒川
僕も、それもありだなと思っていたところでした。僕は額縁を屋外でつくるっていう話だったんですけど、卒業制作が一段落するまで、実際に取り掛かる感じにはなれなくて。その間、どうやって取手に関わっていけばいいんだろうかみたいなところが、けっこう消化しきれないところがあったんです。その間、ライフワーク的に続けられる取手との関わり方みたいなものを模索していて。写真や文章を入れたフォルダをつくっていて、フォルダ名が「走査」っていうんですけど。車で運転して取手を回ることが多いので、そうやって体験している取手をコラージュというか、組み合わせて作品をつくってみています。
毛利
ここ、取手だ。これは前に見せてくれた高校生のときの詩と、繋がりがあるんですか?
荒川
あのとき見てもらって、やっぱりちょっと、久しぶりに詩を書いてみるかって。
田中
おー
小沢
詩のスナップ写真だね。
荒川
そんな感じですね。原稿用紙を目の前にして文章を描いていると、パソコンに文字を打ち込むよりぐーっと深いところに行けるというか。
小沢
そうなんだ。
荒川
これを取手駅の構内に掲示している、きゅうり新聞に載せたりしたいなって。
田中
いいですね。
荒川
卒展が終わって、1月以降に額縁を実施するような感じで動こうかなって。
毛利
じゃあこれは、額縁をつくるための段階みたいなものなんですね。
荒川
はい。
小沢
壁新聞の詩ってすごいね。地味の極み、表現の極北みたいな。
田中
きゅうり新聞というより、きゅうり文芸にしてみたり。
荒川
田中さんと、そろそろきゅうり新聞の2号の相談をしたいと思っています。
田中
そうですね。あとは、今の荒川さんの話と似ていて、車で取手のなかをめぐるっていうことを最近やっているんです。リサーチベースの発表を、その車からするっていうようなことをやっていたんですね。偶然にも荒川さんと似たようなことを、アウトプットがぜんぜん異なる形でやっていて。一緒にやったらなにが起こるのかなっていうのが今、楽しみで。
毛利
もちろん、全部一緒に考える必要もないんだよ。半年やってきて、矛先が違うっていうのは感じているから。コロナもあって、ギャラリーでなにかしなきゃいけないっていう考え方が随分広がったと思っていて。ネットもあれば新聞、藝大食堂、コンコース。結果をここに持ってくるっていう考え方よりも、この作品は別の場所に展示してみようとか、軽やかな侵食を試みてもいいと思う。
田中
僕の車を使って展示をやりたいんですよね。屋根を開けて、取手のどっかの路肩とか、田んぼのど真ん中に停めて、車のなかで展示を組み上げて。
毛利
めっちゃいいじゃん。
田中
車を停められるところがすべて展示場所になる。
毛利
キュレーションという意味では、インタビューした人の作品や言葉を展示するとか。ジョンの作品としてつくってもいいんだけど、ジョンって自分の手でつくるというよりも、組み合わせを楽しんでいる人だと思う。
田中
はい。それがすごく楽しくはあります。
毛利
それを作品化するっていう考え方でもいいんだよ。田んぼの真ん中に荒川さんの作品を置いてみたりとか。
小沢
郊外の住宅には移動販売の車が来るよね。移動販売の八百屋さんは野菜を車に展示してるわけだよ。あれはすごいヒントで野菜を作品に置き換えたら何が起こるだろう。
田中
空間そのものの中に詩があるっていうのがちょっと見てみたいなって個人的には思っていて。音を流してもいいし。どうでしょう。
小沢
詩っていうのは黙読する時代以前は、吟じるものだった。そこが詩の原点だったはずだよね。おもしろいと思う。
毛利
場所性とその作品が合致するようなこともキュレーションじゃない。その場所でやる意味を考える。
羽原
取手って平坦に見えるけど、ジョンくんも荒川くんも、フックになるものをそれぞれの感覚で引っ張ってくださっていて。取手の人たちにとっても、実は気づき得るものなんじゃないかと思っています。お2人の発表のかたちが、普段通りすぎている風景の中でのスイッチにつながるなって、おもしろいと思う。
毛利
COVID-19があって、よかったことかもね。単純に決まった空間のなかで結果を出そうっていう話じゃなくなってきた。
羽原
普段の展覧会っていう仕組みではありえないことをやってみる。
田中
そうですね。
羽原
ジョンくんの作品は、誰のものをキュレーションするのか。異なるアーティストなのか、リサーチでお会いしている方の日常なのか、そのあたりでぜんぜん見え方が違う気がします。
毛利
そうそう。もう少し具体的に考えていったほうがいいよ。
田中
はい、作品を出してくれそうな人たちに声をかけ始めてみます。
毛利
自分のプロジェクトだと自覚して、のびのびやってもらいたいな。
荒川
話を聞いていて、成果を額縁に固執しなくてもいいのかもしれないと思って。額縁は別の機会でもいいからやりたいことではあるんですけど、主観の映像っていうところに本質はあるので。それをつけながら朗読したりとか。違う展開の可能性も出てきた感じです、今日もありがとうございました。
10月につづく。