アートのある団地 - そうぞうする団地

レポート:「みんなでそうぞう大会〜実験プレイバック&サイコロトーク〜」

終了しました 2025/10/09


暮らしながら、それぞれが”そうぞう”することを通じて、 少し先のまちを手づくりする。
取手井野団地ではじまっています。

井野団地や取手のまちで生活している方とともに、少し先のこの地域・この社会に必要な「仕組み」を実験し、団地を起点に将来の設計をつくっていくことを目指して活動している「そうぞうする団地」。
2024年の夏に実験パートナーを公募し、2024年の11月から2025年秋まで、12組の実験パートナーのみなさんがさまざまな活動を行ってきました。そんな「そうぞうする団地」のひとつの節目として、これまでの実験をふりかえり、そこから井野団地の将来をみんなで「そうぞう」する会をひらきました。
同時開催で、「(仮称)井野団地家具店」の家具販売会と、「一団の生地、余地、土地」の勝負服の展示&スパイスカレーの会も実施。
賑やかな当日の様子をお届けします。

そうぞうする団地についてはこちらから

 

2025年9月21日(日)。井野ショッピングセンターに、朝早くから何やら多くの人影が。
いこいーの+TAPPINOからはスパイスが香り、空き店舗105ではふしぎな形にネオンが光り、広場には大小さまざまな家具が並ぶ、いつもとちがう心躍る光景ができあがっていきます。「そうぞうする」団地の晴れの日。少し汗ばむくらいの陽射しの中、秋の気配を感じる心地よい風が吹いていました。

最初にはじまったのは、「(仮称)井野団地家具店」の家具販売会。これは、2025年5月〜9月にかけて、井野団地やその周辺の方から不要になった家具を回収し、リメイク・修繕・クリーンアップを行い循環していく仕組みを試みるプロジェクトです。
回収の際に思い出もともに聞き集められた家具たちが、元の持ち主の思い出とともに、次の主人のもとへ旅立っていきます。

11時、よそおいあらたになった家具たちが団地の広場に並びました。
とある机は、アメリカで買ったお気に入りのもの。サイズは大きく団地に運び込むのも大変だったけれど、とても素敵なデザインで、どうしても捨てられずに大切にとっていたそう。そんな思い出の机が新たな姿で並ぶ様子を一目見るべく、元の持ち主さんが広場を訪れると、その机には売約済みの札が。
「誰が買ってくれたの!?」と嬉しそうに尋ねる元の持ち主さんに、次のご主人をご紹介。2人とも笑顔で「ありがとう」と言い合っている姿は、とても印象的でした。

ぐるぐる広場には、入れ替わり立ち替わり、紹介されている家具を見て回る方々がきてくださいました。

販売会がはじまってしばらく経った頃、ひとりの小学生が話しかけてくれました。「あれとか、あんな大きいのに500円だって!」そう言って目を輝かせている様子に、何か欲しいものはあった?と尋ねてみると、「あった。」と一言。どれが欲しいのかは尋ねませんでしたが、お小遣いで買えちゃうかもねと言ってその場はお別れしました。
しばらくすると、その子がまたこちらへ来ます。そこで「はじめて家具買っちゃった!」と報告が。自分で選んで買ったはじめての家具。きっと大切に使ってくれることでしょう。

他にも、たくさんの家具を台車に積んで持ち帰る頼もしいお父さんや、お孫さんが欲しがった家具を嬉しそうに購入し、担いで持って帰ってくれた優しいおじいちゃん、添えられていた元の持ち主の一言に惹かれ、その思い出とともにを家具を持ち帰っていったお兄さんなど、地域の中で家具と思い出が循環し引き継がれていく、団地ならではの光景が浮かび上がったように思います。

いこいーの+TAPPINOの前では、「かべをそうぞう」プロジェクトの展示も行われました。
団地の中にある共同スタジオ・井野アーティストヴィレッジのオープンスタジオで出会った杉本将己さんをパートナーアーティストに、4年後の完成に向けて、壁面のプラン制作を進めています。2025年5月いっぱいまで募集した、みなさんからの井野団地の「かべ」に現れたらいいアイディアたちと、それをもとに杉本さんが制作してくれている壁画のプランがじっくりと見られる冊子にまとまりました。
井野団地の壁がどのように彩られていくのか、わくわくが止まりません。

12時頃になると、いこいーの+TAPPINOから美味しそうな匂いが漂ってきます。「そうぞうする団地」名物、実験パートナーの未確認歩行物体(川本早花/菊地晴)によるスパイスカレーの会、スタートです。

4月に開催したトークイベントや、7月の井野団地ふれあい夏祭りでも好評だったスパイスカレー。今回も大盛況でした。
未確認歩行物体の二人は東京藝術大学先端芸術表現専攻修士2年生で、今回「そうぞうする団地」では「一団の生地、余地、あるいは土地」という「ファッション」と「食」をテーマにした日々の活動と作品制作を行ってきました。
メンバーの菊地晴さんは、スパイスカレーを作るのが大得意。4月のトークイベントでは、「カレーがあると自然に人が集まってくる」と言っていた菊地さんでしたが、全3回行ったスパイスカレーの会はどれも、その言葉通りさまざまな人が集まり、笑顔でカレーを囲んでいました。
今回は3回目ということもあり、朝からカレーはまだ?と尋ねてきたおばあちゃんや、この時間に来るからとっておいて!という方もいらっしゃいました。スパイスカレーの香りと人が集う様子に思わず足をとめる姿も見られ、「食」を通じた場をひらくことの間違いないエネルギーをたっぷり感じられる時間になりました。


そして、いこいーの+TAPPINOの隣の空き店舗「105」では、未確認歩行物体がリサーチをしてきた取手市井野団地と台北市(台湾)大安団地で出会った「勝負服」の展示を行いました。

身につけていると前向きな気持ちになれる・背中をおされる、そんなファッションを探しリサーチを重ねてきた二人。持ち主の思いとともに預かった「勝負服」やアイテムたちが、そこに宿る物語を象り「そうぞう」できるようにインストールされていました。


預けてくれた団地の方も展示に足を運んでいて、その場で追加のアイテムを持ってきてくれた方も。メンバーの川本さんは、リサーチ期間で「師匠」と呼びたい方に出会えたといいます。その方にはこの後ご紹介する「みんなでそうぞう大会」でもお話をしていただきましたが、服飾が得意で自分でさまざまな服やアイテムの制作なさってきた方で、リサーチを通して川本さんと仲良くなり、今では裁縫などを教えているそうです。
団地でアーティストと地域の方が出会い、刺激を受け合う時間が生まれるきっかけになったんだな、ということをしっかり確かめる心持ちになりました。

そんな展示もされている空き店舗「105」に、13時前、椅子とぬいぐるみが並びました。
未確認歩行物体が団地の方から預かったぬいぐるみを各々抱えながら、「みんなでそうぞう大会〜実験プレイバック&サイコロトーク〜」の幕開けです。
この日は全12組中8組の実験パートナーが参加し、出入り自由な形で地域の方にも多くご参加いただきました。

はじめに、「そうぞうする団地」のコーディネーター田中天眞音から、この企画についての説明を行いました。今回は、これまでのふりかえりのイベントであると同時に、これから先の井野団地を考えていくためのスタートでもありました。これまでの活動に参加してくれた方も、存在は知っていたけど参加はまだだった方もいらしたので、改めて、「そうぞうする団地」の実験パートナーのみなさんが、団地の中で地域に暮らす方たちと関わりながら活動をしてきたこと、そしてこのプロジェクトでは、暮らしながらみんなでこの先の井野団地について考えていこうとしていること、をお伝えしました。

そしてその後、実験パートナーのみなさんとの実験プレイバックへ移ります。
8組のパートナーそれぞれから、どんな「そうぞう」のもと、どんな内容で、どんな思いで活動してきたかを話してもらいました。残念ながら今回は参加が難しかったパートナーの活動は、田中から紹介しました。
違う視点を持つパートナーがそれぞれの「そうぞう」を形にして、井野団地にだんだんと活動が溶け込んでいった過程をプレイバックすると、井野団地が秘めている資源や可能性、また未来への「そうぞう」の幅広さを感じられる時間となりました。改めて、12組ものパートナーがここまで思いを貫いて走り切ってくれたことに、感謝をお伝えしたいと思います。
より詳しく知りたい方は、「そうぞうする団地」のページより、各実験パートナーの紹介記事をご覧ください。


実験プレイバックの後は、全員が話し手!となる第二部パート、「サイコロトーク」です。
参加者がそれぞれサイコロを回し、出た目のお題について話す形式で行いました。今回用意したお題は、以下の6つ。

     

  1. いまやってみたい:今やってみたいこと(活動としてでも、個人的にでもOK!)
  2. ここにいきたいな:行きたい場所とその理由
  3. 団地でのこまった〜:活動を通して、または日々の生活の中で困ったこと
  4. 私のすきな〇〇:自分のすきなこと、もの、場所など
  5. 井野団地のすきなところ:活動や生活の中で感じたすきなところ
  6. あるといいな:井野団地や自分の暮らしの中にあるといいなと思うもの

 

実験パートナーをはじめ、参加してくれた地域の方も含めてみんなで輪になりサイコロをバトンしていきました。
ありがたいことにたくさんの方にお話しいただいたので、トークの内容を抜粋してご紹介していきます。

 

集まれる場

一番最初に先陣を切ってサイコロを回してくれた、「(仮称)井野団地家具店」の飯名悠生さん。出たお題は【団地でのこまった~】です。
飯名さんは、3月くらいまで井野団地ではないどこかの団地で暮らしていたそうです。その場所には外に出て遊ぶところ、集まるところが少なく、狭くて困っていたとのこと。生活の中に誰かと集まれる場所が欲しかったといいます。

井野団地にお住まいのMさんも、団地のコミュニティについて話してくださいました。お題は【私のすきな〇〇】です。
Mさんは、人が好きだと言います。輪を囲んでいる方の中にはご近所さんもいて、毎朝エレベーターでお会いするそうです。その方が朝から地域のために動いてくれている姿を見て、「自分にはできないことをしてくださってありがとう、応援したい!」という気持ちになるし、いつもみなさんから力をもらっていると、とても素敵なお話をしてくださいました。
そして一番すきなのは、人とのつながり。すれ違う方に毎日挨拶をしていたら、最初は返してもらえなくてもだんだん会話をするようになった経験があったそうです。一人が好きな方もいると思うけれど、つながるきっかけがあれば心を開いてくれるかもしれないとMさんは言います。そんなつながりを楽しんで、日々気持ちを新たに生きていきたいですね。

「いのだん、認知症でまちびらき」で活動しているオンライン・オレンジカフェいこいのメンバー、石山さんからも【いまやってみたい】で人とのつながりを作りたいというお話が。
井野団地にお住まいの石山さんですが、すれ違って挨拶しない人はいないくらい、団地では人と人とのつながりを感じるそうです。ただ、家にいて外へ出ていない人も多いんじゃないかという印象も抱いているといいます。
やってできるかはわからないけれど、そういう方と集まっておしゃべりなどができるといいなとやってみたいことを話してくださいました。

そして、今日はじめて井野団地に来た方も場所についてのエピソードを教えてくださいました。
お題は【すきな〇〇】。すきな場所として、広島県尾道市にあるゲストハウス「あなごのねどこ」を紹介してくださいました。
そこは、ふらっとみんなが来る場所だそうです。ゲストハウスなので宿泊をする場所なのですが、はじめて来る人もいれば、常連さんもいるようなところ。居てもいいし、居なくてもいい。自由に出入りでき、気負わずに集える場所というところが魅力的と話してくださいました。

「まちかど・もうそう倶楽部」の活動を行ってくれたSaGASのメンバーである関沢さんは、【井野団地のすきなところ】のお題で、他の団地の現状とも合わせて井野団地のコミュニティについて話してくださいました。
海外の団地や郊外の団地の一部では、さまざまな人が暮らすなかコミュニケーションが上手くいかず犯罪の温床になっていたりもするといいます。そんな現場を目の当たりにしてきたからこそ、井野団地で活動する中で、持続的にコミュニケーションが取れているのが素敵なところだと感じたそうです。

生活の中に誰かと集える場所や、話せる場所、気軽に立ち寄れる場所があると、心が元気になったり、癒されたりするということが垣間見えた話たちでした。

 

本のあるくらし

井野団地のサービスフィールド住宅にモニターとして住みながら、いこいーの+TAPPINOのスタッフとしても働いてくれている、アーティストの平井亨季さんも、サイコロトークに参加してくださいました。出た目は4、【私のすきな〇〇】です。
平井さんのすきな〇〇は、本。読んだり、買ったり、本について話したりするのがお好きだそうです。が、しかし。取手には本屋さんが少ない!以前は大きい本屋さんもあったそうですが、そこもなくなってしまい……今では駅のビルに入っているところくらい。古本屋さんなどもあまりなく、個人経営の本屋さんや団地の中にちょっとした古本屋さんができてくれたら嬉しいな、という願いも聞くことができました。

また、団地に住まわれている方でも【私のすきな〇〇】のお題で私も本が好きで、というお話をしてくれた方がいらっしゃいました。その方は家にたくさんの本があり、たまに売りに行ったりもしているそうですが、ボロボロなものも多く、いらないから全部売るというのもなかなか難しいとのこと。少し古くても気にしなくて良い、図書館のような場所があると嬉しいと話してくださいました。

4月から取手に住みはじめた学生さんもサイコロをふって、【あるといいな】で本について触れてくれました。住みはじめたばかりだけれど、古本屋さんなどはたしかにあったらおもしろそう、というコメントに加えて、以前住んでいたマンションのおもしろいエピソードも。エントランスのところに、”リサイクルコーナー”があり、服やかばんやアクセサリー、他にも様々ないらなくなったものを置けたと言います。そこに置いてあるものは自由に持って帰って良く、成人式のかばんは実はそこからもらったんです、と笑いながら話してくれました。

生活の中に本があると嬉しいという人が多く、それをシェアしたいという需要を感じた話たちでした。また、本だけでなくいらなくなったけどまだ使えるようなものを、地域の中で循環させられるような仕組みができるとおもしろいかもしれません。

 

団地の空間と環境

未確認歩行物体の菊地さんのお題は、【井野団地のすきなところ】。少し悩みながらも、団地の風景がすきですと話しはじめます。はじめて井野団地に来た時、同じ形の建物がたくさん並んでいるのが壮観で、びっくりしたといいます。
また、菊地さんは井野ショッピングセンターにある共同アトリエ、井野アーティストヴィレッジ(IAV)を借りて制作を行っているのですが、IAVのアトリエ内はリフォームがされていないので、設備はとても古いそうです。ただ、生活をしているわけではないので、古さで困ることはそれほどなく、純粋に昔のものとしての貴重さを感じるといいます。昔からある場所だからこそ残っている“歴史としての風景”が、一部でも残っていくといいなと思いを話してくださいました。

SaGASのメンバー、杉浦さんのお題も【井野団地のすきなところ】。杉浦さんは、実ははじめの頃から好きなところは一貫しているようで、井野団地の屋外空間について語ってくれました。
まず、空が広いところ。建物は並んでいますが高くても5階建てで、上を見上げた時に、ぱーっと空が広がっているのが好きだそうです。そして、緑が多い環境も好きだといいます。「まちかど・もうそう倶楽部」のワークショップでは、参加者のみなさんと団地の中を歩き、まちをおもしろく使うもうそうを出し合って、外の緑に囲まれながらお茶会をしました。
団地には、ひらけた屋外スペースが意外と多くあります。そういった余白を使っていける仕組みがあれば、みんなが外に出てきておもしろい風景ももっと生まれるのではないかと「もうそう」のプロはいいます。

「もうそう」繋がりで、こんな話も出てきました。
今回、URの方にも数名お越しいただいたのですが、そのうちの3名が所属している、社内のとある(非公式の)クラブがあるそう。その名も、「もうそうクラブ」。まさかの共通点に、会場からも驚きの声があがりました。そんなもうそうクラブに所属している方のおひとりは、井野団地の景色がとても好きだそうで、桜並木や遊歩道の景色を毎年見に来ているとおっしゃっていました。
今、団地での暮らしが社会的にも再度見直されているといいます。外に出なくとも、団地の中で心地よく暮らすことのできるように、もっと住みやすくなるように、暮らす人のやってみたいを取り入れていきたいと話してくださいました。団地の良いところを引き出して、使い倒してください!と言っていただけたので、やってみたいことはどんどんみんなでやってみましょう!

そして、こんな環境があればもっと暮らしやすくなるのでは?という意見もちらほら。

オンライン・オレンジカフェいこいの藤井さんは、【団地でのこまった〜】のお題で団地に欲しい機能をいくつかあげてくれました。
その一、地図。何度も出てきますが、井野団地の揃った景観と入り組んだ道は、まるで迷路のようです。そんな団地に初めて来た人は、もちろん迷います。地図もいくつかは大通り沿いにありますが、必ず目につく場所にあるかと言われると、そうでもない。これといった目印もない。特徴的な目印やわかりやすい地図が団地のあちこちに増えれば、歩いていて迷わないし目でも楽しめるようになるかもしれません。
その二、トイレ。井野団地は、居住者の半数以上が高齢者。高齢者の方にとって、歩いている途中にトイレがあるかどうかは、非常に大事なことです。団地の中に、すぐに立ち寄れるトイレが増えれば、外に出ようという気持ちになる方も増えるかもしれませんね。
その三、Wi-Fi。若い方は特に、Wi-Fiのあるカフェに立ち寄って作業する、なんてことがよくあるのではないでしょうか。もし団地の中にWi-Fiがあって作業ができる場所があれば、団地に住んでいる人、または近くに住んでいる人がふらっと立ち寄る場所になるかもしれません。
やはり暮らすうえでは、実用的な機能も欠かすことはできないですね。

以前井野団地の担当をされていたURの方も来てくださっていて、その日にあった出来事から【いまやってみたい】を話してくださいました。
異動などもあり、一度井野団地を離れてから10年。同じエリアに帰ってきたら、まだTAPの活動が続いていたことをとても喜んでくださっていました。みなさんからいただいたものも実現していきたい!と話してくださり、ご自身はひとつ、日陰があるといいなという案をあげてくれました。この日は快晴で、もちろん陽の光はばっちり差し込んでおり、屋外でやっていたイベントは少しばかり暑く……集まった住民の方と話していると、スーパーまで歩いて行くだけで汗だくになっちゃうよ〜と言っている方もいたそうです。緑は多いものの、道の途中には確かにあまり木陰などもありません。歩いている途中に小休憩ができる木陰を作れば、暑い夏でも外に出る気持ちが浮かぶかもしれません。

 

井野団地の”ほっと”な人たち

「きかせて!あなたの和室のくらし」の浅野ひかりさんにもサイコロを回してもらいました。出たお題は【井野団地のすきなところ】。ポジティブなお題で安心しましたと井野団地の好きなところを話しはじめてくれます。「いこいーの+TAPPINOがあって100円でお茶とかが飲めるところ!」と浅野さんが言うと、会場からやったー!という声と笑い声が。そして続けて、いこいーの+TAPPINOでの出来事を話してくださいました。
浅野さんは4月から5月にかけて、いこいーの+TAPPINOにて地域の方へ和室のくらしについてインタビューを重ねていました。その中で、顔を覚えてくだる方が増えていって、最近ではいこいーのへ行くと、浅野さんが来た!という感じでみなさんが話しかけてくれるのが嬉しいそうです。
浅野さんの活動に伴走する中では、浅野さんの人柄の良さと地域の方の包容力をひしひしと感じました。団地の一角で、畳の妖精に扮してインタビューをする姿は、非常に不思議な光景でしたが、浅野さんは丁寧なコミュニケーションで地域の方々の懐へすっと入り込んでいて、インタビューを受ける人たちも抵抗なく畳の妖精との会話を楽しんでいました。インタビューを経て完成した「きかせて!あなたの和室のくらし」の冊子は、いこいーの+TAPPINOで読むことができます。ご興味のある方はぜひ読みに来てください。

そして、「一団の生地、余地、あるいは土地」の未確認歩行物体のメンバー、川本さんも【井野団地のすきなところ】について話してくれました。
川本さんも制作に向けて団地に通ってくれていましたが、その中でたくさんのものをいただきました!と嬉しそうに話します。
もらったものとして、かぼちゃ、さつまいも、ソフトクリーム、おいなりさん、スコーン、ぬいぐるみ……といろんなものを紹介してくれました。ご厚意でいただけるのが新鮮で嬉しく、まるでゲームの『どうぶつの森』のような世界観で暮らせるところが好きだそうです。そして自分も誰かに”ギフト”ができる人になりたいと言っていました。

この日はじめて井野団地を訪れたにも関わらず【井野団地のすきなところ】が当たってしまった方も、その日に出会った団地の人について話してくれました。同じ建物が並ぶ団地の中。どこへ行けばよいか迷っていたら、通りがかりの方に挨拶していただいて、なんとなく方向を把握できたといいます。優しい人がいるいいところという印象を抱いてもらえたようです。

また、「そうぞうする団地」の活動を支え続けてくださっている現URの担当の方もお越しくださり、お話しいただきました。お題はなんと【団地でのこまった〜】でしたが、快くマイクを握ってくださいました。
井野団地には藝大生やアーティストも訪れているものの、まだまだ団地には若い方がなかなかいないということに困っているといいます。そんな状況をなんとかしたい、とサービスフィールド住宅という4階・5階セットの住宅の販売など工夫もしながら住戸の販売も行っています。そんな井野団地での活動を通して、住んでいる人たちがすごいと感じたそうです。地域の柔軟な活動やアーティストの表現を受け入れていて、なんならおもしろがってくれているようなところが、他にはない環境であり、そのマインドが大好きだといいます。

あたたかい話もたくさん出てきましたが、もっとこうなって欲しい!というそうぞうも出てきました。

今年団地へ越してきて、「そうぞうする団地」の活動への積極的参加も含めて見守り続けてくれたアーティストのEさん。お題は【あるといいな】です。
井野団地で暮らしはじめて、「そうぞうする団地」をはじめとした地域の活動に参加する中で、集まった人たちの輪を見た時に、同世代の人が少ないと感じたそうです。年代でいうと、40代〜50代。仕事も生活も忙しい世代かもしれませんが、その世代が出入りすると団地の空気が変わるのではないかと話してくださいました。

対して、団地に50年以上住んでいる、いこいーの+TAPPINOの立ち上げメンバーの方。同じくお題は【あるといいな】でした。
昔は子どもたちがたくさん住んでいた井野団地。今は子どもはもちろん、若者も減ってしまったそうです。そんな中でも、年寄りの団地と言われないように、若い方がマンションではなく団地で何年か暮らしてくれると嬉しいし、高齢者にも優しくて、子どもや若者も過ごしやすいところになって欲しいと願いを話してくださいました。見た目は古くても、中身は住んでいる人次第!という言葉がとても印象的でした。

井野団地には、もっとこうなったら楽しくなるのではという熱い「そうぞう」力と、その「そうぞう」を実現していくための活動を受け入れてくれるあたたかさの両方が根付いていることを強く感じました。

 

最後に、「そうぞうする団地」のコーディネーター田中天眞音より、少しだけお話しさせてください。
私は、「そうぞうする団地」がはじまることをきっかけに、取手井野団地へやって来ました。それまで取手にはほとんど来たことがない中で、右も左もわかりませんでした。そんな状態からはじまった実験パートナーの募集。ありがたいことにたくさんの応募をいただき、応募してくださったみなさんと対話を重ねて、12組の実験パートナーのみなさんと企画を走らせることができました。残念ながら今回はご一緒できなかった方々もいらっしゃいましたが、ご縁も生まれ、見守り続けてくださった方もおり、とても嬉しく思います。
実験パートナーのみなさんに伴走して感じたのは、自分のやりたいことへの芯と、暮らしを楽しもうという心意気と、地域と関わりたいという意志。この3つは、どのパートナーさんにも共通していたように思います。最初にご提案いただいた企画から、無理なく継続できる形へ落とし込んでいくためにたくさんの相談や対話を重ねて、そこから実際に動いていく際にはたくさん井野団地へ通っていただいて、エネルギーを惜しまず注いでくれたみなさんに、心から謝意をお伝えしたいと思います。
そして、この1年で井野団地のあたたかさをとても感じました。どこから来たのか、はじめて見る顔の人がなにか活動をはじめ、いろんな人が団地を訪れている中で、活動を受け入れ見守ってくださった団地のみなさん。通ううちにだんだんと顔が見える関係になってきて、会ったら話しかけてくれたり、企画にもたくさん参加してくださったり、作業をしていたら差し入れをしてくれたり……大変なことももちろんありましたが、団地のみなさんのあたたかさにたくさん助けていただきました。今では、そんなみなさんがどうしたら楽しく暮らせるかな~なんて日々考えています。少しずつでも恩返しをしていきたいなと思っています。
URのみなさまにも、たくさんのご支援をいただきました。突拍子もないお願いや、実験的で先がはっきりは見えない活動に常に寄り添ってくださりありがとうございました。活動全体に真摯に向き合ってくださったお陰で、今まで見えていなかった景色が見えたと思います。

と、なんだかおしまいの挨拶のようになってしまいましたが、実は「そうぞうする団地」はまだまだこれから。引き続き出会えたみなさんと、そこで暮らすみなさんと、井野団地の未来を「そうぞう」していきます。
そして、少しでも興味を持っていただけたら、いつでも井野団地にいらしてください。私たちと一緒にやりたいことをやってみましょう!さあ、つぎの「そうぞう」をお楽しみに。

レポート:田中天眞音
撮影:Horiguchi Takuya

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